緊急事態宣言の葛藤

今日はコロナウィルス対策の緊急事態宣言が発せられてから二日目です。当社の事務所がある吉祥寺(東京)は普段より人は少ないようですが、ガラガラというほどではありません。世の中の危機感50%といった感じでしょうか。かく言う自分も、自宅から吉祥寺に出て来てますし、さっきは昼メシを喰いに外に出たので、街がガラガラにならない原因の一人になっています。
今日の午前は、ネットやSNSを見ながら、これから自分がどういう行動をとるべきかを考えました。当社はコンサルティングの他にストアリサーチもしているので、外に出なければ仕事になりません。こんな状況でも人は何かを食べなければ生きていけないので、当社のリサーチ対象である食品スーパーや飲食店はライフラインとして営業を続けているお店が多く、実際に生活者の頼りにされています。意を決してリサーチを止めてしまえれば良いのですが、それでは売上が大きく減ってしまいます。ボクはどうすれば良いのでしょう。
ボクのように悩ましい立場にある事業者は世の中に少なくないはずです。例えば、小規模飲食店や理美容のオーナーなども同じです。「営業を止めてしまったら生きて行けなくなってしまう」というのは決して大げさではなく切実な悩みなのです。月商300万円の飲食店で、原価率とアルバイト代などの変動費が60%、家賃などの固定費が50万円だとすれば、利益は70万円です。オーナーはそこから借金を返し、その残りで生活しますから、借金返済が30万円だとすれば生活費は40万円(税金や公的負担込み)ですが、もし売上が200万円になるとオーナーの取り分は0円になってしまい、生活できなくなってしまいます。更に1か月店を閉めたら、100万円近い赤字になってしまいます。それでも1ヶ月限定なら凌げるかもしれませんが、先行きが見えなければ借金が膨らんでいくだけです。だから、こんな状況下でも売上を少しでも取るべく店を開けざるを得ません。感染よりも生活への恐怖の方が先立つのです。ボクはこんな状況だからこそ、昼メシはできるだけ飲食店を使うべきだと思います。チェーン店だって安泰ではありません。小規模FCオーナーは全く同じ状況ですし、直営店だって厳しい経営環境に変わりはないのです。
しかし、ネットを眺めていると「そんな考え方は間違っているのかもしれない」と自分自身に対して疑心暗鬼に陥ってしまいます。ボクの友達には医療関係者が多いのですが、SNSを通じて届く彼等彼女達が携わる医療現場からの悲痛とも言える叫び声や、ネットに掲載されている医療従事者の切迫感あるコメントに触れると、「家から出ること自体が悪なのかもしれない」という気にすらなってしまうのです。ボクはどうすれば良いのでしょう。
今日の午前中は、個人が直面している現実と倫理の問題にどう折り合いを付ければ良いのか判らず葛藤しておりました。でも、現実的に外で仕事をすることを止める訳には行きませんから、出来る限り感染リスクを抑える動き方をするしかありません。どうすれば良いのでしょう。今日のところのボクの結論は、「当面の間は出来る限り電車に乗らないこと」としました。
ボクは普段ほとんど車を使いませんが、今後1ヶ月くらいは積極的に車を使うことにします(平成元年登録車ですけど)。また、駅3つ4つくらいの近場には自転車で移動するよう心掛けます。さっそく今日の帰宅から自転車です。実は、事務所には折り畳み自転車のダホンが1台あります。4年前に購入しましたが、ずっと事務所近くの大学に通う娘に貸与しておりました。しかし、3月で娘が大学を卒業したので、今月からダホン号はボク専用です。そこで、昼メシ後に自転車の掃除をしました。布できれいに拭いて、緩んだネジを締め、チェーンに油を注しました。それでもまだくたびれていますが、近場なら十分走れそうです。
という訳で、自転車いじりに没頭していたら、午前中のモヤモヤがかなり晴れました。今週予定していた仕事を1件止める決心もつきました。
経営者がどこで折り合いをつけるかの判断はとても難しいことですが、有事の時こそ経営者のバランス力が問われます。バランスといっても常に中間に正解がある訳ではなく、どちらか一方に大きく偏るバランスの取り方だってあるので、本当に本当に難しい判断なのです。当社のようなちっぽけな個人企業でも迷うのですから、従業員がたくさんいる会社の経営者は本当に大変です。ましてや国や自治体のトップは、いかばかりでしょう。日本のために思い切ったかじ取りを期待します。
半年後にこの投稿を見て、「あの時は大変だったけどすぐ落ち着いてよかったなぁ」と懐かしめるようになって欲しいものです。