「海賊と呼ばれた男」を読んでやったこと

写真

この本が巷の話題になってから、もう1年ほど経ちますが、文庫本になったのを機に初めて読んで見ました。感動して3回くらい泣いてしまいましたが、既に読まれた方は如何でしたか。

ご存知の方も多いでしょうが、この物語は売上高数兆円の会社を創り上げた偉大な事業家の話です。私には、事業家という次元を超えて、人間の生き様を見せられたような気がしました。ただ、僕も経営者のはしくれです。「経営とは」という観点からも考えさせられることが多々ありました。

「経営とは人と金を調達する仕事。」これは以前から思っていたことですが、今回、改めてこの思いを強くしました。 事業家が何かを成し遂げようと思えば、大概はお金が必要です。お金があれば設備を作れますし、人を雇うことも出来ます。無借金経営は理想かもしれませんが、借入や出資による資金調達で事業の成長速度が増し、成功の可能性が高まります。他人の金をテコにして事業を拡大して行くのは経営の王道だと思います。大切なのは、借りた(或いは出資を受けた)お金の使い方を間違えないこと。それだけです。

日本に限らず世界中で金融ビジネスがこれほどの存在感を保ち続けているのは、裏を返せばそれだけ世の中に「事業」が存在しているということです。ですから、金融機関の方達は、新たな価値の創造に果敢に挑戦しようとする事業家をサポートして欲しいと願います。

さて、この本を読み終えて、私がすぐ起こした行動とは何でしょう。それは、某金融機関に行って、融資の申し込みをすることでした。 実際に自分で事業資金を借りた経験が無ければ、いくら決算書が読めて、融資や投資の経験があっても、経営者やコンサルタントとしては半人前だと思ったのです。会社のこれからのことを考えると、手元の資金を増やしておきたかったという事情もあります。いずれにせよ、この本に背中を押されて私はお金を借りに行きました。

初めての経験ですし、ちっぽけな会社ですから、少額の借入とは言え、承認が下りるまでは不安でした。しかし、案外すんなりOKが出ました。自慢する訳ではありませんが、やはり「餅は餅屋」です。銀行とベンチャーキャピタルの経験を存分に活かすことができましたから。(もし謝絶されていたら、ショックのあまり立ち直れなかったでしょう。。。)

今回、事業資金を借りる立場になって初めて判ったこともありますが、資金調達で肝心なのは、テクニックよりも、この本の主人公のような「正直さ」なのだと改めて感じました。特に物的担保の無いベンチャーや中小企業の経営者にとって、「信用」に優る担保はありません。日々の活動は全て、自分の信用を培うことにつながっているのです。

「金」と共に大切な経営資源である「人」については、今のところ調達予定がありません。私は性格的に組織を大きくしていくタイプではないからです。しかし、だからこそ私は、仲間をどんどん増やして、事業を発展させている経営者を心から尊敬します。そして、そんな経営者を応援して行くのが使命だと思っています。