経営者のバランス感覚

やじろべえ

私は、長年ベンチャーキャピタルで投資の仕事をして来たこともあり、いろいろな経営者を見て来ました。優秀な経営者は「バランスをとる能力」に長けていると感じます。

「やじろべえ」が会社だとすれば、内外の環境変化によって、右と左の重さが常に変わります。トップたる社長は、重心を移動させたり、重りを足したり減らしたりしながら、「やじろべえ」を水平に保たなければ、倒れてしまいます。     まさに、「経営=バランスをとる仕事」だと思いますが、その手法に経営者の特徴が表れます。

あるレストランの社長は、こまめにバランスをとってやじろべえが大きく揺れないように常に均衡を保っています。その社長の目には、おそらく右の重りにお客さんの満足、左の重りには会社の利益がぶら下がっているはずです。ちょうど均衡がとれる場所に重心を持って来る能力があるので、お店は繁盛し、会社も好調な収益を保ちながら着実に成長を続けています。

また、あるファストフードの社長は、「右が重い」と感じたら重心を一気に右側に寄せます。重心を寄せ過ぎて左に傾くと、今度は逆にターンして左側にぐっと寄ります。ダイナミックな展開に振い落されてしまう社員も出てきますが、一定の時間軸を置いて振り返ってみると、見事に「やじろべえ」が均衡を保っているのです。しかも右に左に動くたびに「やじろべえ」が大きくなって行きます。

どちらのバランス感覚が良いかは、一概に判断できません。その「やじろべえ」に乗っかる人達が、自分の感覚にあった方を選べば良いのだと思います。

現実の会社は、左右の2点バランスのように単純な構造ではありません。お客さん、利益、株主、社員、取引先、社会・・・もろもろの利害調整を図って行くのが経営者の仕事ですから、たくさんの料理が乗った大きなトレイ(お盆)を、皿回しのように人差し指一本で回しながら、全力で走っているような感覚なのかもしれません。

というわけで、私も経営のバランス感覚を養おうと、事務所では時々バランスボールに座って仕事をするようにしています。でも、バランスをとるのは、なかなか難しいですね。

 

バランス