お店をみる

RIGO

私はストアリサーチの仕事をしています。                   客としてクライアントのお店を利用しながら現場の状況を確認し、そこで起きている問題をあぶり出して、原因の仮説や解決策をレポートします。また、ベンチマークしたい好事例などを取り上げて、チェーンの本部にフィードバックします。

この仕事で一番重要なのが、お店を徹底的にみて、現場の事実をなるべく多く拾い上げることです。                             こういう仕事のやり方は、作家や記者など物を書く職業の方達が行う取材活動と同じだと思います。徹底した事実調査と想像力が良い作品を生むのです。     実は、私が長年やってきた投資業務も基本的に同じような仕事の進め方をします(と、私は思っています)。投資候補先の経営計画や財務諸表、経営陣へのインタビュー、現場訪問などで、極力多くの情報を入手して、事実の積み上げから投資候補先の真の姿を捉え、リスクを推測して投資判断するからです。         ストアリサーチの仕事も、事実を捉える力と仮説設定力が重要なビジネススキルとなります。そういう意味で、私の仕事の中心は「現場(お店)をみること」だと言っても差し支えないと思います。

ところで、「お店をみる」と「みる」を敢えてひらがなで書いたことには意味があります。                                 「みる」には、「見る」「視る」「診る」「観る」「看る」など、多くの漢字が使われます。 私の「みる」は、いったいどれでしょう?

リサーチでは、生活者の目線でお店を利用することによって、最も多くの情報を得ますから、まずは普通にお店を「見る」姿勢が重要です。 そして、リサーチャーとしての目線は「視る」です。細かい部分まで現場の事実を見逃さない姿勢です。 また、「診る」という観点はコンサルタントとして忘れてはなりません。現場の事実を把握して問題点を見出し、その原因を仮説設定し、解決策の処方箋を提案する流れは、医師が患者さんを診るのに似ていると思います。 しかし、実は最も自分の感覚に近いと思っているのは、「観る」なのです。私はいつも「お店はステージ。現場のスタッフは役者。」だと思っています。素晴らしいお店は何時間観ていても全く飽きません。店を観るのが楽しくて楽しくて仕方がないのです。ですから、お店を「診る」のではなく、いつも楽しく「観て」いたいというのが私の本音です。 最後に付け加えたいのが「看る」です。この漢字には、相手に対して暖かく接する「思いやり」のようなニュアンスを感じますが、この姿勢は絶対に忘れてはなりません。偉そうに店を「視てやろう」などと思っていると、その態度が必ず仕事に表れます。そんな態度のリサーチでは、生活者目線で店を「見る」ことは出来ませんし、クライアントへの成果物であるレポートにも横柄な文言が並び、読んだ方の心に届かないでしょう。自分を戒める意味でも、「看る」気持ちを大切にしています。

私は自分自身の仕事のクリティを維持するために、常に5つの「みる」姿勢を大切にしています。ストアリサーチを仕事にしている者の心構えです。